アベニュー
福岡県立太宰府病院

  わが国の精神医療保健福祉は、精神保健福祉法の改正等を通じて入院中心の医療から、
地域精神医療・地域生活支援の方向に理念と施策が展開され、精神障害者の人権保護と自
立、社会参加の促進が急務となってきています。
  このような状況の中、1931年に精神科専門病院として設置された「福岡県立太宰府
病院」では総事業費約10億円をかけ、第一期工事として精神科救急医療システムの拠点
としての機能や初期集中治療充実のための救急、急性期病棟(70床)、回復期・社会復
帰病棟(120床)が完成し、4月14日より新病棟で業務を開始しました。
  続く第二期工事は2000年の完成を目指して、痴呆、思春期、依存症、合併症の病棟
と作業療法部門や体育館からなるソーシャルセンター(リハビリテーションセンター)を
建設する予定となっています。

病棟
  精神科の病棟はこれまで窓に鉄格子があったり、周囲から病院の中が見えなかったりし
て閉鎖的なイメージがありましたが、現在の病棟は鉄格子等がなく、内装は木目調をベー
スに落ち着いた病室となっています。基本は一人部屋・四人部屋で、ベッドもゆったりと
設置されています。
  各部屋には洗面台、クローゼットが備え付けられており、ベッドとベッドの間には、タ
ンス・書棚・プライバシーを保てるようにカーテン等が設置されています。回復期病棟に
はユニットバス・トイレ、電磁プレート、流し台、冷蔵庫付きの個室もあり、ゆったりと
過ごせるように配慮されています。
  病棟にはいくつものリビングが設置され、少人数でゆったり会話をしたり、食事をとっ
たりできるようになっており、落ち着いて過ごせるように配慮された設計になっています。

デイホスピタル
  デイホスピタルは外来通院の方を対象とした外来治療と、並行して行われるリハビリテ
ーションのための通所施設です。同じ悩みや障害を持った仲間と様々な活動に取り組む中
で、社会生活に馴染むための準備を行っています。

外来
  外来では思春期の悩みを抱えたお子さんと家族からの診察や相談を受けたり、アルコー
ルの問題で相談を受けたり、老年期の痴呆の症状で受診されたりしています。精神科は決
して特別なところではなく、またうつ病や精神分裂病などの病気も特定の人のみがなるよ
うなものではないので、風邪をひいたら内科を受診するように、気軽に精神科を受診する、
そのような利用方法になっていって欲しいと思います。

ノーマライゼーション
  これまで、精神科では長期入院患者の割合が非常に高く、状態が安定しても退院できな
い方、いわゆる社会的入院の方々が多くいました。全国の精神病院の入院患者は34万人、
このうち受け皿があれば7万人から10万人が退院可能といわれています。この状況を改
善するため「ノーマライゼーション」の理念のもと、精神科でも病状が安定すれば、当然
退院をし、リハビリをしながら地域で普通の暮らしをするべきという考え方が徐々に広ま
ってきました。
  太宰府病院においても十数年前から、家庭や施設、アパートなどへの退院促進に取り組
んできました。入院時からPSW(精神医学ソーシャル・ワーカー)が係わり、住居の課
題、家族の協力体制の課題、経済的課題等、継続的に相談を重ね、退院に向けての取り組
みがなされることで退院までの期間が早くなりました。さらに退院後も継続してデイホス
ピタルの職員や訪問看護者が自宅に定期的に訪問することで本人及び家族の生活を支えて
います。なかには長期入院のため社会生活の経験が少なく、強い不安をみせられる方もあ
りますが、料理や買物、銀行でのお金のおろし方、電車の乗り方など、具体的な練習を重
ねていくことで、不安を乗り越え、多くの方がアパートや自宅に住むことができるように
なってきています。

グループホーム
  また、単身生活が困難な方には、家族と病院スタッフによる「そえ木の会」が運営する
「ミキホーム」(アパート形式入居者五人)と「とびうめ荘」(一軒家形式入居者5人)
の二カ所のグループホームが用意されています。グループホームには世話人が配置され、
生活全般に渡って助言、援助することで、地域生活支援を行っています。

ホームヘルプサービス
  地域生活の課題としては、食事等が大きな課題となっています。買物にいけない方も多
いため、買物に一緒にいくことや、料理を一緒につくり簡単な料理を覚えてもらうこと等、
ホームヘルプサービスに期待されていることは少なくありません。しかし、関東・関西の
8都道府県の市町村を対象とした調査(全家連保健福祉研究所調査)では、精神障害者に
ホームヘルプサービスを提供していない自治体の理由として、制度が新しいこともあり
48%パーセントが「要綱などで対象でない」、46%が「申請がない」との回答があり
ました。要綱の整備を一刻も早くすすめるとともに、精神障害者もホームヘルプサービス
が利用できることを広報・周知して、利用者を掘り起こしていくことが必要です。

PSW(精神医学ソーシャル・ワーカー)
  太宰府病院にはPSWが三人配置されています。PSWは、患者さんが安心して療養生
活や退院後の地域生活を送れるようにさまざまな制度や社会資源を紹介し、サポートしま
す。日本精神病院協会調査によるとPSWを配置している病院とそうでないところの入院
患者の平均在院日数を比べてみると、PSWを配置していない病院では618日、PSW
が1人〜2人の病院は509日、PSWが3人〜8人の病院は413日、9人以上いる病
院だと314日と驚くほどの差が現れています。もちろんPSW配置による成果だけでは
ないのですが、太宰府病院のように、訪問看護活動、精神科デイホスピタル等、在宅生活
を支えていくための専門職をそろえて社会復帰に熱心な病院が、やはりそれだけの実績を
出しているといえるでしょう。

コミュニティケアチーム
 精神障害者が地域で暮らし続けるためには太宰府病院で行われているようなケアチーム
体制に加えて、地域の精神科クリニック、地域の訪問看護ステーション、ホームヘルプサ
ービス実施機関、配食サービス実施機関等がコミュニティケアチームを組む必要があり、
これらが密接に連携され提供されることにより、退院後の援助もよりスムーズにすすめて
いけるはずです。
  最後に、以上のようないわば「フォーマルサポート」だけではなく、ボランティアグル
ープや、公民館の社会教育活動への精神障害者の参加など、地域で暮らしていけるような
「インフォーマルサポート」がより充実していくことが必要です。あわせて精神障害者は
「病院」だけではなく、地域に暮らしていることがあたりまえだという地域社会、また調
子を崩したら気楽に病院にいける、病院にいくことに対して気後れしない、そのような精
神障害についてしっかりと理解のある地域社会をつくりあげていかなくてはならないので
はないでしょうか。

手帳
  精神障害者保健福祉手帳は居住地の保健所経由で都道府県知事に申請し、交付を受ける
ことになっています。この手帳の所持者にはいくつかの福祉サービスがあります。@預金
利息の非課税、A遺産相続の優遇、B自動車購入の税額控除などがあります。
 身体障害や知的障害の手帳保持者にはこの他にJR、バス、航空などの交通費割引、有
料道路利用の料金減額、NHK放送受診料減免、公営住宅の優先入居(一部対象)等があ
りますが、精神障害者にはほとんどありません。今後は他の障害者の方と同じレベルでの
サービス保障が望まれます。

《住所と連絡先》
   太宰府市五条3丁目8−1
   TEL092−922−3137