第六四号(二〇〇〇年九月号)においてトライアル雇用事業の実質的な継続についての特集や、福岡県における障害者の雇用の現状と雇用確保のための各種制度について特集をいたしました。
本号はそのトライアル雇用が平成十三年度も「障害者雇用機会創出事業(仮称)」として実質的に継続されることが決定し、具体的に企業や職安、障害者職業センターがどのように障害者緊急雇用安定プロジェクトを活用しながら雇用に結びつけていけたのかを、今回初めて知的障害者を雇用した企業の事例を通して、その活用方法について報告いたします。
【知的障害を持つ
男性の雇用事例 二四歳】
○障害の状況(療育手帳B)
知的障害で自閉傾向がある。読み書きは小学校中学年程度で簡単な計算は可能。明るく素直な性格だが、潔癖性でよく手洗いをする。匂いや清潔な環境にこだわりがあるが、身辺の自立はできている。
○就職までの経緯
養護学校高等部卒業後、知的障害者授産施設に三年間通所、その後、電気部品製作所において八ケ月の職場実習を経験し、平成十二年一月から二月に障害者緊急雇用安定プロジェクトによる職場実習、三月〜五月にトライアル雇用、その後本採用に至る。
○業務内容
会社は従業員数五〇○人を超える大企業で、電気製品の補修用部品の卸売販売、修理・保守点検及び設置工事等の事業を展開している。障害者雇用率は1.9%である。
当該障害者の業務内容は修理を中心とした部門でラジカセのテクニカルアシスタントとして簡易修理を担当している。
○業務指導方法
技術指導を直接行う担当者を一名配置し、この指導専任者がマンツーマンで指導を行っている。指導はまず作業工程を分解し、ワンステップずつ焦らず反復指導を行い、感覚で要領をマスターしていくように指導した。障害者職業センターが派遣する生活支援パートナーや地域のハローワーク担当官も始めの一ヶ月間は作業が慣れるまでほぼ毎日付き添い、作業・生活指導等を行った。
事業主として特に注意したことは、本人を孤立させず、仲間意識を持ってもらうこと、言葉での注意は短く明確に行い、できるだけ見て触らせての指導を行うということだった。
○知的障害者の採用を通して感じたこと
知的障害者の採用は初めてであり、不安であった。採用を通して事業主として感じたことは、本人は働く喜び、仕事に対する意欲は高く、本人の性格・適性が仕事にあえば高い能力が期待できるということである。すでに修理台数は健常者の平均を上回る状況となっている。
○ トライアル雇用の利点
@雇用する側、雇用される側両方にとってトライアルの経験は大きな自信につながった。A雇用する側にとってはトライアル期間中に個人の特性や仕事に対する適性、また職場に馴染めるかの見極めができる。B職場実習期間中は実習生並びに事業主に対して奨励金が助成される。C三ヶ月のトライアル雇用期間中には事業主に奨励金が助成されるので、給与負担も軽減される。D実習・トライアル期間に障害者が一生懸命に働き、認められようと努力をしている姿を周囲が認め、現場との協力体制がとれた。
以上のとおり、トライアル雇用は雇用する側、される側に大きな利点があった。
【最後に】
ハローワーク、障害者職業センター、企業との連携によりトライアル雇用事業を活用し、雇用につながった知的障害者の雇用事例をご紹介しましたが、この事例はトライアル雇用のシステムを大きなきっかけとして、@働く本人、A企業・職場、B本人・企業を取り巻く条件の三要素の相互作用がうまく機能し、本人と企業の適切なマッチングにつながっていきました。
二○○一年四月から障害者雇用機会創出事業(仮称)が始まります。この事業を積極的に活用することにより、一人でも多くの障害をもつ方々が三要素の相互作用機能の高まりにより、雇用に結びついていくように願ってやみません。
【障害者雇用に関する
関連情報】
障害者雇用機会創出事業(仮称)
本事業は、三ヶ月間の「試行雇用」を通じ事業主に対し障害者雇用に関する理解を深めてもらうとともに、障害者雇用に取り組むきっかけを作ることにより、障害者の雇用機会の創出を図ることを目的に実施されます。事業の実施主体は、厚生労働省が日本障害者雇用促進協会に委託し、公共職業安定所に求職している障害者が対象となります。具体的な内容は試行雇用期間を三ヶ月間とし、事業主と対象者との間で雇用契約を締結します。試行雇用を実施する事業主に対して、事業所奨励金を、雇用した対象者一人あたり月額五九、〇〇〇円支給するとともに、事業主及び対象者に対して、福岡障害者職業センターが必要に応じて雇用管理等についての支援を行うこととなっています。
社会福祉法人等及び小規模作業所との連携による職域開発援助事業について
本事業は、法人等あるいは小規模作業所に入所・通所する障害者が就職を希望する場合に利用できます。障害に配慮し、民間事業所を職業リハビリテーションの場として活用しながら労働習慣を始めとする職業生活全般の訓練を行います。訓練終了後は当該事業所に雇用されることを目指します。生活面の指導は福岡障害者職業センターとの連携によって、障害者が入居・通所する法人・作業所の職員が担当します。協力事業所の要件は、技術支援パートナーを選任でき、訓練効果があると見込めれば対象者を雇用する用意があること等で、事業主に対して月額五九、〇〇〇円(平成十二年度)の委託料が支払われます。対象となる障害者は、すべての障害者が対象となっていますが、この事業を利用することでその事業所での雇用が見込まれる方となっています。指導期間は、二ヶ月以上四ケ月以内となっています。法人や小規模作業所の委託要件は、障害者の雇用促進に理解と努力があり、職員一名を委託支援パートナーとして選任できること等が必要となります。なお、法人・小規模作業所に対して月額二一五、〇〇〇円(平成十二年度)が委託料として支払われます。
問い合わせ先
福岡障害者職業センター
電話〇九二-七五二-五八〇一
福岡障害者職業センター北九州支所 電話〇九三-五四一-五二二二
重度障害者介助等助成金のうち、「業務遂行援助者の配置」について
重度知的障害者または精神障害者を新たに雇い入れ、障害特性に配慮した雇用管理を行うために、「業務遂行援助者」を配置した事業主に対して支給されるものです。業務遂行援助者の行う雇用管理(特に業務遂行のため)とは、重度知的障害者等の作業遂行にあたって、作業方法、作業手順等の手本となる等のきめ細やかな、かつ反復した粘り強い指導と、更にその作業の遂行にあたり、相談にのり温かく見守ることをいいます。業務遂行援助者は、他の職務と兼任でもかまいません。一人の業務遂行援助者の措置できる障害者は三人までです。助成対象となる障害者は、重度知的障害者と精神障害者で、重度知的障害者は療育手帳Aとされている方が対象ですが、Bの方でも障害者職業センターの判定書により障害の程度が重いとされた場合は重度とみなします。精神障害者(そううつ病、精神分裂病、てんかん)は症状が安定し就労が可能な方又は精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方となっています。なお、職業安定所の紹介以外の場合は、福岡県、又は北九州市で実施している「精神障害者社会適応訓練」を受けた方となっており、短時間労働者も含みます。支給額及び支給期間は、一年〜三年は対象障害者一人あたり月三万円、四年〜十年は対象障害者一人あたり月一万円、合計十年間支給されます。ただし、短時間労働者は、それぞれ半額となります。認定申請期限は助成対象となる障害者が雇用された日の翌日から三ヶ月以内です。
問い合わせ先
社団法人 福岡県障害者雇用促進協会 電話〇九二-四七三-七六八五