障害者福祉施設におけるサービスの質の向上のための対策は

          社会福祉法人 ゆうかり学園 荒木 章司(福祉対策部長)

一、はじめに

 平成十二年六月七日に社会福祉事業法等の一部が改正されました。

 改正の内容は、(1)利用者の立場に立った社会福祉制度の構築@福祉サービスの利用制度化 A利用者保護のための制度の創設(2)サービスの質の向上 @事業者の自己評価などによるサービスの質の向上 Aサービス利用者の選択に資する、事業運営の透明性の確保。(3)社会福祉事業の充実・活性化(4)地域福祉の推進などです。戦後五十年以上続いた社会福祉の構造が「保護」から「利用者主体」へと変わりました。

二、大会宣言

 平成十二年九月五日〜六日に行われた第十九回九州身体障害児者施設研究大会の『大会宣言』は今後の施設のあり方を提言している。

【大会宣言】

 社会福祉基礎構造改革は、従来の措置制度を廃止しサービス利用者とサービス提供者を対等な関係に位置づける新しいサービス制度を提言している。

 改革の柱は、これまで行政が直接関わることによって福祉問題を解決してきた制度を、対象者である利用者に主体性をもたせ、自らが求めるサービスを選択するという契約の制度を導入し、地域における保健、医療、福祉の総合化したサービスの提供を促進すると共に、要援護者への重層的な福祉サービスを提供できる相互扶助を制度的に構築しようとするものである。

 この様に従来にもまして、施設経営のあり方、利用者への人権擁護、施設職員の資質の向上、地域に果たす役割等一層の努力が求められている。

 施設の創設期に比べ、今後の施設利用者像は相当の変化を来たし、社会情勢も大きく変わってゆくものと思われる。

 この改革によって多様なサービス提供主体の参入が促進され、市場原理が作動する。利用者が本当に満足のいくサービスが提供でき得ること、又、これらを提供できるような経常的な仕組みをつくりあげていくことが求められる。

 我々は「最も援助を必要とする人への尊重」を基本理念とする事を確認しながら、制度改革の果たすべき役割、あり方を追及するための研修会を持ち九州各県の身体障害児者等への福祉増進のため研究討議を行う事を目的に「制度改革に対応する施設のあり方を考える」というメインテーマのもと、二日間にわたり熱心に研究討議を行った。

 我々九州身体障害児者施設関係者は社会福祉基礎構造改革に適切に対応し、二十一世紀の身体障害児者の福祉向上の推進に寄与すべく利用者個々のニーズに応じたサービス提供ができる施設となるよう研鑽に励み、又、在宅障害児者の支援を含めた地域福祉の拠点としての機能を充実させる施設づくりを目指さなければならない。

 これらの目的達成には行政の強力な支援をはじめ、地域社会の理解と協力が不可欠であるが、何よりも我々身体障害児者施設関係者のたゆまぬ自己研鑽が大切であることを自覚し、ここに集う参加者が一丸となって職務遂行に全力を注ぎ、障害児者福祉の向上に邁進することを確認し、熊本大会の宣言とする。

平成十二年九月六日 

平成十二年度九州身体障害児者施設研究大会

三、当法人の二〇〇〇年の取組み

 当法人には、肢体不自由児施設、同通園部門、重症心身障害児施設、重度身体障害者授産施設、身体障害者療護施設、身体障害者デイ・サービスセンターの四施設六部門があり、三百八十名が利用しています。また職員数は二百三十名以上となっています。当法人の二〇〇〇年の取組みを紹介します。

○対策 とりかかりとして

・平成十二年一月十九日を初回に、各施設・各寮で全職員が十一週(回)にわたって「利用者本位(主体)のサービスの実現を目指して」というテーマで討議を行いました。四月五日に行われた討議内容の報告会では「改革は、ソフト面とハード面があるがハード面は資金的な裏付けが必要であり、すぐに着工できるものと困難なものがある。出来るものから取りかかる。ソフト面については今日からでも変えられると思う。みんなが討議したことを現実にしていくよう努力して下さい。」という事務局長のコメントがありました。

○対策 保護者等に対して

・二月二十六日 保護者との懇談会で『基礎構造改革と施設の対応(風にたとえて)』について事務局長より講話がありました。「この風は冷たい風か暖かい風か今は分からないけど、利用者にも施設にも同じ風が吹いているのは間違いない。知恵を出し合い、協力しながら乗り切りましょう」という言葉で締めくくりました。

・八月十日、保護者会で苦情解決制度の説明を行いました。

・十月二日、「障害者・児サービス共通評価基準」を用いて自己評価を行い、結果考察を県へ提出しました。

・十一月二十一日、理事会にて苦情解決体制における第三者委員の承認を得る。

○対策 職員にむけて

・ 四月十二日、職員に向けての理事長講義がありました。内容は『@制度改革の動向。A法人の指針。B利用者主体のサービスとは。C法人の今後の課題』でした。

 講義後、次ぎのような「点検十項目」の文書を各部署へ配布しました。

@意思表示が出来る・出来ないで利用者への接し方が変わっていないか。(差別はないか、平等か)A利用者に対する言葉づかいに気をつけているか。(呼び捨て、暴言はないか) Bプライバシーを尊重しているか。(持ちものチェックは前もって了解をとっているか。相談内容に対しての守秘義務など)C利用者の立場にたって仕事をしているか。(量より質、

速さより丁寧。)D利用者に対して、「してやっているんだ」というような高圧的な態度をとっていないか。E利用者の意見を充分に聞き、納得のいく返事をしているか。F利用者の意見、希望が生活に反映されるよう個人個人が努力しているか。 G利用者との約束は守っているか。(出来そうもない約束はしていないか)H利用者との挨拶は出来ているか。(職員間はもちろんのこと)I利用者が楽しく快適で安心して暮らせる場所を提供することが施設(職員)の仕事だと自覚しているか。

 言葉だけで伝えるより文書化したものを、職員全員に伝達する方法が有効です。伝達事項に「これだけは守ろう」「これだけはやめよう」「仕事改善は5Sから」等があります。管理会議、運営会議のメンバーを大幅に増員するなど施設長や管理職の考えや取組みが、いち早く職員全員に理解される方法や、職員一人一人の援助内容、援助場面での態度が施設長に分かるシステムが必要です。

・八月三十日、職員に向けての理事長講義がありました。内容は『リスクマネジメント(サービス)』についてでした。

○ 対策 組織づくり

@療介護事故防止委員会(事務局長他十名)A安全管理委員会(指導員他十五名)B防災対策委員会(指導員他九名)C感染症対策委員会(施設長他十四名)D苦情解決制度 第三者委員(五名)生活向上委員会(心理判定員他十名)E自己評価(担当福祉対策部)F広報誌委員会(指導員他四名)Gホームページ作成

http://www.yuukari.or.jp

今後、食中毒対策委員会、安全衛生管理委員会(労働災害対策委員会)の設置が予定されています。二〇〇一年、理事長の意向は二〇〇〇年の取組みを継続審議していく。重点目標については「利用者本位のサービスの具現化」と「組織的なサービス管理の展開を図ること」など年頭の訓示、あるいは広報誌一月一日号で述べています。

四、まとめ

 利用者が主体的に自分の生活や人生を決定していく過程において、サービスの内容を自ら選択できるような、施設の体制やシステムを施設(事業者)側の努力と責任で改善していくことが大切です。

施設経営の理念を掲げ、それに沿って援助計画を立てること同時に計画を立てて実行できる人材の配置、そのための人材育成が大切です。仕事の意味や進め方が「わかり」作業を手順どおり「できる」こと、マナーを守り責任と積極的な態度で援助活動が出来ること、また利用者の立場を理解し、共感できる人材を養成していくことが必要です。利用者と施設が対等な立場であるとき、利用者から選ばれる施設、地域から支持される施設を目指し、よりよいサービスが出来るように職員全員で取り組むことが大事です。これからは市場原理により質の悪いサービスは自然淘汰されます。