「地域福祉権利擁護事業について」


福岡県社会福祉協議会(福岡県地域福祉権利擁護センター)では、痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者など、判断能力が十分でない方々の生活や権利を擁護することを目的とした「地域福祉権利擁護事業(法律名:福祉サービス利用援助事業)」を実施しています。 ここでは、福祉サービス利用上の支援に関する権利擁護制度として・創設された本事業の概要とその果たすべき役割について報告します。  地域福祉権利擁護事業は、平成十一年度厚生省予算として計上され、都道府県社会福祉協議会を実施主体とする国庫補助事業として、同年十月一日、全国一斉にスタートしました。本格的な少子・高齢化の進展、家庭機能の変化、障害者ができる限り地域社会において自立して生活できるようにすべきであるというノーマライゼーション理念の定着など、我が国の社会福祉を取り巻く状況の変化の中で、判断能力が十分でないために、福祉サービスの利用や日常的な金銭管理をひとりでは十分できない方が増えています。  このような場合、これまでは民生委員やホームヘルパーが善意で援助することがありましたが、援助者の権限等が制度化されていないこともあって、金銭上のトラブルが起きやすいなど、適切な対応がとれないといった問題がありました。一方で、介護保険制度の導入や社会福祉基礎構造改革にみられるように、福祉サービスの利用については、個人の自己決定を尊重する観点から、個人が自らサービスを選択し、それをサービス提供者との契約により利用する制度に移行しています。  こうした状況から、利用者本人の立場に立って、福祉サービスの利用援助等を行う仕組みを作り上げることが急務となったのです。  平成十二年六月七日公布・施行された社会福祉法は、福祉サービスの利用者の立場に立った制度構築をめざし、利用者保護制度の一環として、本事業を「福祉サービス利用援助事業」という第二種社会福祉事業として新たに位置付けました。  同法第二条において「精神上の理由により日常生活を営むのに支障がある者に対して…福祉サービスの適切な利用のための一連の援助を一体的に行う事業」と規定しています。  まさに介護保険制度の実施を契機とした「福祉サービスの利用制度化」という新しい仕組みを支えていくために創設された「利用者保護制度」といえるでしょう。  以下、この事業の具体的な内容を紹介します。  対象者は、自分の判断能力に不安があるために、福祉サービスの利用の仕方がわからなかったり、預貯金の出し入れなどにお困りの方です。  これらの方々が安心して地域で暮らせるように、「福祉サービスの利用手続き、公共料金等の支払い手続き」などを援助します。利用の際には、本人との協議による支援計画(援助内容)を作成し、契約を締結します。利用料は、一回(一時間程度)千円です。  利用については、初期相談窓口で・あるお住まいの社会福祉協議会に・ご連絡いただくこととしています。  本人以外でも、家族など身近な方、行政の窓口、民生委員、ホームヘルパーなどを通じての相談にも対応いたします。  ただし、本人との契約制ですから、利用者は、契約内容を理解できる程度の判断能力(契約締結能力)を有している方に限定されています。  したがって、契約の内容について理解できない方はこの事業を利用できませんし、契約(援助)中に判断能力が低下した場合にも、この事業のサービスは終了することになります。  ここに、高齢者や障害者が地域で安心して生活するためのもう一つの公的施策である「成年後見制度」との相互補完が不可欠となってきます。  成年後見制度は、利用者の財産管理及び身上監護に関する契約等の法律行為全般を行う仕組みですが、地域福祉権利擁護事業は、利用者ができる限り地域で自立した生活を継続していくために必要なものとしての援助を行うことが目的です。本人に契約締結能力がない場合には、成年後見制度により選任された後見人等との間で利用契約を締結することとなります。  また、本人の意思を確認できないため、本事業による支援計画をたてることができない場合や、本事業の援助内容だけでは本人に対する十分な援助ができない場合、本人の意思能力喪失後も本人が援助の継続を希望する場合など、本人の判断能力の程度や援助内容に応じて、成年後見制度を利用できるよう努める必要があります。  このように、両者が連携を密にして、それぞれの機能を果たすことが極めて重要であり、さらにはこれを支えていくための各種事業(弁護士会、司法書士会、社会福祉士会等において取り組みが開始されています。)による重層的な権利擁護システムの構築が求められます。  時代の要請によって生まれたこの事業は、緒についたばかりです。  今後、取り組みを通し ト課題を明らかにし、一層充実した制度へと育てていかなければなりません。福祉サービス利用者の意思決定を援助するという権利擁護の視点に立ち、関係機関及び各種事業とのネットワークにより「誰もが地域で安心して生活する」ことを支えていく役割を果たしていきたいと考えています。