「知的障害者のケアマネジメントについて」
蓮の実団地 田川晴基 
(福岡県地域療育等支援事業)

 本年6月7日より、従来の社会福祉事業法、身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法等が改正・施行されることになり、社会福祉基礎構造改革が一層促進される事となりました。その中で、平成十五年度からの福祉サービスの利用契約制度の実施に向けて、障害のある人達が地域において豊かな生活を実現していく為には、そのニーズを把握し障害の程度に応じて、サービスを総合的に利用する事を支援する手法のケアマネジメントがあり、その重要性が高まっています。つまり、これまでの福祉事務所等の行政処分(措置)としてサービス提供する方法から、利用者主体で、利用者のニーズに応じた福祉サービスを総合的にコーディネイトするケアマネジメントの手法を必要とするようになってきます。 厚生省は、平成15年度からのケアマネジメントの在り方を確立するために、平成七年度よりこの事業を実施するための基盤整備をを行って来ましたが、平成12年度については、専門的な人材(ケアマネジャー)の養成とモデル事業を含む障害者ケアマネジメント体制整備事業を実施しています。  この専門的人材養成の一環として、今年8月28日(月)より9月1日(金)までの5日間、名古屋市にある名古屋国際会議場にて、「身体障害者・知的障害者ケアマネジャー養成指導者研修」が開催され、出席させて貰う機会を得ました。本研修は、段階的な人材養成研修となっており、まず指導者研修として障害別に各都道府県より2名ずつ参加し、研修を終えたあとは、各々の地元において同様の研修(伝達研修)の企画・開催に関わって、必要な人材(ケアマネジャー)の養成にあたる、というものです。名古屋の指導者研修には、身体障害者ケアマネジャー養成研修ならびに知的障害者ケアマネジャー養成研修の受講者があわせて約240名参加しました。形式的には、一応障害別という事になっていましたが、実際のカリキュラムはほとんど共通であり、厚生省としても、障害種別を越えて対応できるケアマネジャーの養成という意向がある様でした。但し、開講式での、厚生省仁木課長の話によると「このケアマネジャーは、公的介護保険におけるそれとは異なる。混同しない様に別の名称が良いかも知れない。」との事でした。従って、(障害者)ケアマネジャーというのは、公的介護保険におけるような、制度に則った正式な名称ではまだありません。5日間の研修の半分は、相談面接、ケア計画作成、社会資源活用等の各演習があり、皆、自分の専門外の領域も扱わねばならない事と各地元での今後の伝達研修の事も頭にあり、緊張の中にも熱気を帯びた、かなり手応えのある研修であったと思っています。その様な理由で、本稿のテーマが、知的障害者のケアマネジメントという事になっておりますが、若干の相違を除けば、身体障害者の場合と基本的に異なる点はない、という事を断っておきます。ところで、先程から述べているケアマネジメントについてですが、その起こりは、1970年代のアメリカにおける障害者の地域生活支援の取り組みとされています。つまり、ノーマライゼーションの理念のもと、知的障害者の脱施設化並びに精神障害者の病院からの退院が促進された結果、大都市のホームレスが増加し大きな社会問題となり、この人達の生活を総合的に支援する為に、医療・福祉・住居・所得などに関する色々な援助機関を適宜判断して結合させる支援センターが地域に設置され、この事がケアマネジメントの先駆けとなり、他の障害者や高齢者の領域にまで広まりました。右記の各段階について、各々留意すべき点はありますが、全体として重要な事は、利用者の多様な、しかも真のニーズに応え、それを充足する為に、(フォーマル又はインフォーマルに拘らず)サービスの計画を立て、実施する事により利用者の自立とQOLの向上を図る事が目的となります。 繰り返し述べますが、利用者のニーズがまず在り、それを充足するためにサービスを、新たに創出してでも提供する事がケアマネジメントの正統な手法であり、既存の制度の中に利用者のニーズをあてはめてしまう事は、本末転倒と言わねばなりません。そこで、「自立」という事についてですが、これは言うまでもなく、自らの意思(自己決定)に基づく生活という事であり、ADLの自立だけを指しているのでは勿論ありません。ただ、この「自立」という事において、知的障害者の場合(精神障害の場合もそうですが)、自己決定の能力に問題があるため、利用者本人のみとのやりとりでは真のニーズを把握する事が困難な事も考えられます。この事について、海外では、ケアマネジメントの前ノ、「自己決定支援プログラム」を設けているとの事です。この点が、成年後見制度や権利擁護事業と関わる部分かも知れませんが、確かに配慮しなければならない面であり、同時に知的障害者のケアマネジメントにおける特徴と言えるかも知れません。次に、少し実務的な話になりますが、ケアマネジメントでの利用者確認の段階で用いる「相談受付票」、さらに本人の状況を把握するために利用者宅を訪問した際に用いる「訪問票」、本人のニーズを把握しケア計画の具体的な内容を記す「ケア計画検討表」、実際のサービスのスケジュールとしての「週間ケア計画表」が、統一された様式として示されています。このような手順を着実に踏んで、ニーズ・優先の個別性のあるケアプランが・立・てられ実施されることになります・が・、それだけにケアマネジャーの資・質が問われるところでもあります。その他、対象者のライフステージの長さや、実施主体、保険制度による認定審査の有・無(対象者の限定)など、高齢者のケアマネジメントと異なる点がたくさんありますが、対象者のニーズ優先という前提は共通しています。
これらの制度が、平成十五年度より具体的にどのような形で施行されるのか、まだ分からない点もありますが、ケアマネジメントの理念だけは、少なくともよく理解しておく必要があると思われます。